スポンサー獲得において、「選ばれる」チームになるための方法

スポンサーの獲得は、企業がチームに求める価値が変化していることから、提案方法の再考が求められています。

 

この記事では、

・スポンサー企業がスポーツチームに求める価値の変化
・スポンサー獲得に向けてチーム側が行うべき取り組み
・独自の方法でスポンサーを獲得した事例

を紹介します。



スポンサー企業がスポーツチームに求める価値の変化

広告露出から「企業課題の解決」へ    

以前のスポーツスポンサードの目的は、テレビや新聞での露出度を増やすことでした。ところが、インターネットとSNSの普及で娯楽が増え、スポーツのマスメディア露出は相対的に減り、試合中継も配信へ形を変えました。こうした環境ではスポンサーシップの価値を露出だけに求めるのが難しくなってきたと説明しています(※1)。

 

この変化をうけて企業は、広告掲載による認知度の向上以外の価値を求めるようになりました。たとえば、採用の強化や地域との密着などを、チームに協賛することで目指すようになりました(※1)。

 


視聴行動の分散により、コンテンツ供給力を重視するように

視聴行動が分散した結果、スポンサーが買っているのは「試合中の露出」ではなく、ファンとの接点を継続的に生む「コンテンツ供給力」になりつつあります。

 

スポーツは、ライブ中継だけでなく、SNSでの話題化や配信視聴、切り抜きによるハイライトの数が増加しており、配信独占の大型試合も増えています。すると、競技の価値の単位は「1つの試合」から、試合前後の物語、選手の素顔、練習、地域活動まで含む連続した体験へ広がります。スター選手の存在がSNS上の価値を押し上げるという指摘もあり、チーム全体が一つのメディアのような存在になりました(※2)。

 

メディアとしてのチームにおいては、試合日ではない日もコンテンツを供給できることが重要になります。

 


企業の哲学を体現する存在としてのチーム

スポーツチームは、企業が自社のパーパスを語る際の「具体例」になります。チームが持つ社会的信用や地域との関係性は、企業の信頼性の向上につながります。

 

スポーツチームのファンは、自身が応援しているチームのスポンサー企業へ好印象を持ちやすく、その結果、商品の口コミの増加や購入意向に効果をもたらすことが分かっています(※3)。

 

たとえば、浄水技術企業のBWTは、F1チームのスポンサーとなり、「Change the World – sip by sip」という企業理念を前面に出した協賛を行っています。レース会場でボトルフリーを推進し、使い捨てプラスチック削減をファン体験として可視化しています(※4)。

 



チームが行うべき取り組み(1)


提供できる価値の再定義

■ チームの資産を棚卸しする

スポンサー獲得の提案が弱くなる原因は、チームの強みを、試合結果などの競技の内容だけで語ってしまうことです。実際には、チームには競技以外にも多くの資産があります。

 

たとえば、ソフトバンクホークスの公式ブログは、企業ブランディングを、ブランド価値を明確に打ち出して独自のイメージを形成し、信頼性や共感を高めて差別化し、長期的な成長の基盤を築く活動だと説明しています。(※5

 

改めてチーム資産を並べると、地域での信頼を高める活動、子ども向け教室や学校連携、選手のストーリー、試合日の体験、施設の空間、SNSや動画の発信力、ファンコミュニティの熱量などに分解できます。どれも企業の信頼や共感を作る材料になり得ます。

 


■ ファンとの接点を価値に変える  

スポンサーは、ファンとの接点を活用するイメージを持ちたいと考えています。ファンとの接点を、企業がどのように活用できるか説明することが重要です。

 

ファンはスポンサーの存在を前向きに受け取りやすい層であり、ここにチームの強みがあります。だからこそ、ファンが自然に参加できる形に設計すると、企業側の目的に近づきます。たとえば、来場者向けの体験、SNSでの参加企画、地域の清掃や健康イベント、子ども向けの学びの場など、ファンの行動が起点になります(※6)。

 

ファンとの接点をアピールする際は、試合会場、練習場、地域イベント、学校、SNS、動画配信、グッズ売場など、場面ごとに整理を行います。そして、それぞれの場面が企業の目的にどうつながるかを説明することが必要です(※7)。

 

この整理を行うことで、スポンサーへの説明にファンの体験設計の話を加えることが可能になり、企業側により具体的な提案を行うことが可能になります。

 



チームが行うべき取り組み(2)

ターゲットの選定と提案・運用のデザイン      

■ ターゲット企業の選定と仮説設計

スポンサー獲得は、やみくもに多くの企業に提案を行うより、提供できる価値と目的が合致する企業を調べ、狙いを絞るほうが成果が出やすいです

 

ターゲット選定では、業界の相性だけでなく、企業が抱えている課題まで調査をする必要があります。候補企業の既存の広告施策や他社協賛の傾向も確認し、課題を整理します。予算が伸びにくい環境では「社内で説明できる投資」かが重視されます(※8)。

 

そうした調査を通して、仮説設計をします。ターゲットとなる企業の課題が解けたと言える状態を定義し、解決のためにチームが協力できるないようを考えます。たとえば、試合会場や地域イベントにおけるファンとの接点などをとおして、「企業の目的×チームの資産」をうまく合致させるように、設計を行います(9)。

 


■ 提案書の作成

提案書は、企業の課題に対する解決案として組み立てます。
以下の3点を盛り込むことを意識しましょう(※10)。

 

1.  企業側の目的とチームが提供できる価値の整合性
提案書の冒頭で、相手企業が協賛で達成したい目的と、チームが提供できる価値を短く示します。

 

2.  チームのファンが企業の顧客になりうる根拠
企業側のターゲット像と、チームのファンの属性を重ね、ファン層が購買層へと変わる見込みを根拠と共に示します。

 

3.  企業とチームを結びつける物語性
協賛の強みは、チームへの好意がスポンサー企業へ移ることにあります。この効果を最大化するためには、ファンが企業とチームの結びつきを感じられる物語が必要です。提案書には、物語性をどのように生み出すか、クリエイティブ資源などを活用した展望を示すことが重要です。

 

これら3点を、具体的な数値目標と合わせて説明することで、根拠づけられた説明になります。実際に、成功を採点できる数値目標まで共有することで、契約が成立しやすくなることがわかっています(※10)。

 


■ アクティベーションと運用体制の設計

スポンサー獲得は契約がゴールではありません。継続的な契約のためには、運用体制を整えることが必要です。

 

アクティベーションとは、スポンサーになってもらった企業と協賛して、会場運営やSNS、地域の企画などを運用し、ファンの参加や反応につなげる取り組みのことです(※11)。

 

アクティベーション設計が必要なのは、協賛を広告の掲載だけで終わらせず、ファンの参加体験を通じて企業の目的に届く動線を作るためです。会場・SNS・地域の各接点で「誰に何を体験させ、どんな反応を集め、どう記録するか」を事前に決め、役割分担や見直しまで含めて設計しておくことが重要です(※12)。

 



独自の戦略でスポンサーを獲得した事例


企業ニーズ別に活用事例を提示
Bリーグ(バスケットボール)千葉ジェッツの事例    

千葉ジェッツはパートナー(スポンサー)募集ページで、「企業のニーズにどう応えるか」といった活用事例を、企業の目的別に紹介しています(※13)。

 

たとえば地域貢献では、船橋市内の小学生にランドセルカバーを配布し、交通安全意識の向上や事故防止を目的とした取り組みを紹介しています。販売促進では、企業の商品を所属選手がプロデュースし、クラブSNSでのPRと試合会場での販売を組み合わせて、ファンの購入行動を起点に新しい顧客層の獲得や売上増につなげる取り組みを紹介しています(※14)。

 

この事例では、企業の目的に直結する活用像を提示している点がポイントです。企業側は自社の課題にそのまま当てはめて成果までの流れを想像できるようになります。

 


アクティベーション事例を成果まで含めて徹底紹介
リーグワン(ラグビー)トヨタヴェルブリッツの事例    

トヨタヴェルブリッツは、パートナーシップの紹介の中で「アクティベーション事例」を提示し、企業が協賛内容をイメージしやすいようにしています(※15)。

 

「プラコップリニューアルプロジェクト」では、試合会場で使ったプラコップをファンが返却し、回収品を洗浄・原料化してオリジナルグッズへ再生する流れまでを、協賛企業と共同で設計しています。加えて、回収個数や返却率、CO₂削減の試算といった結果も示しており、活動によって生まれた成果を、企業やファンに向けて発表しています(※16)。

 

協賛によって実現する行動や成果を丁寧に説明することで、協賛企業の増加につなげています。

 


単なるスポンサーではなく「パートナー」としてチームを位置づける
FC Barcelona(サッカー)×楽天の事例    

FCバルセロナは、楽天を単なるスポンサーではなく、メイン・グローバル・パートナーと位置付けました。企業がクラブに協賛することで生まれる価値を「どう語らせるか」まで含めて、提携の意味づけを行いました(※17)。

 

具体的には、クラブ初となる「Global Innovation and Entertainment Partner」という位置づけによって、「革新」や「グローバル性」を軸に自社像を語れる文脈をクラブのブランド上に組み込みました(※17)。

 

この事例では、クラブ側から「協賛によって企業が何者として見られるか」というストーリーを示している点が重要です。

 



おわりに    

スポンサー獲得で選ばれるためには、露出の量を売る発想から、企業の目的に合わせて価値を組み立てて提示する発想へ切り替える必要があります。

 

そのためには、チーム資産の棚卸しと、ファンとの接点の分析によって、チームが提供できる価値を再定義することが必要です。
ターゲット企業の選定、提案書の組み立て、契約後の運用体制を丁寧に行うことで、契約を成立しやすくなります。

 


参照

(※1) Japan Sports Activation Awards | 「スポーツ×広告」の新しい賞 – JSAAとは/受賞のメリット

(※2) Nielsen – Tops of 2024: Sports | Nielsen

(※3) https://www.mdpi.com/2071-1050/16/23/10744

(※4) BWT – Title Partner – BWT Alpine Formula One Team

(※5) 福岡ソフトバンクホークス株式会社 – 企業ブランディングとは? DX時代に求められる具体的な手法と施策 | 福岡ソフトバンクホークス株式会

(※6) Cogent Business & Management  Measuring Attitudes Toward Sponsor And Purchase Intention

(※7) PubMed An Empirical Exploration of Sports Sponsorship: Activation of Experiential Marketing, Sponsorship Satisfaction, Brand Equity, and Purchase Intention

(※8) Gartner Gartner 2025 CMO Spend Survey Reveals Marketing Budgets Have Flatlined at 7.7% of Overall Company Revenue

(※9) IEG – IEG | Demystifying Sponsorship | Purpose of Sponsorship & Strategic Insights

(※10) IEG – Step 1: Corporate Partnership and Sponsorship Fit – IEG

(※11) IEG – IEG | How Does Sponsorship Work — Sponsorship Basics Explained

(※12) IEG – Sponsorship Activation Strategies to Maximize Performance – IEG

(※13) 千葉ジェッツ – パートナー・スポンサーページ|千葉ジェッツ公式サイト | 千葉ジェッツ

(※14) 千葉ジェッツ – 地域の子供たちの交通安全を守るため、船橋市の新小学1年生に「オリジナルランドセルカバー」を寄贈! | 千葉ジェッツ

(※15) トヨタヴェルブリッツ – パートナー・スポンサーページ|トヨタヴェルブリッツ

(※16) 【公式】NTTジャパンラグビー リーグワン – トヨタヴェルブリッツ、プラコップリニューアルプロジェクトにて生まれ変わったグッズを販売!! | 【公式】ジャパンラグビー リーグワン ニュース

(※17) Rakuten Group, Inc. – Rakuten to become FC Barcelona Main Global Partnerfrom 2017-2018 season | Media Room

 


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