栄養補給で勝利を引き寄せる、アスリートが覚えておくべき栄養の基本とは?

試合中のパフォーマンス維持、熱中症や脱水症状の対策、試合後の疲労回復など、スポーツにおいて栄養補給は非常に重要です。

 

この記事では、

・栄養補給の基本原則
・補給タイミングの目安
・競技の種類別の考え方
・サプリを使用する際の注意点

を紹介します。



勝つための栄養補給の基本

スポーツにおける栄養補給とは?    

スポーツにおける栄養補給とは、トレーニング〜試合前・中・後の状況に応じ、食品・飲料でエネルギー(糖質など)、栄養素、水分・電解質を計画的に摂取し、競技力の発揮と回復、障害予防を支えることです。

 

日常の食事と水分補給を基礎に、必要に応じて補助食品を足し、競技や練習の状況に合わせて設計することが必要です。

 


栄養がパフォーマンスに影響する理由

栄養補給で、私たちは、

・体を動かす燃料
・体を回復する材料
・熱を逃がす水分

を身体に取り入れています。

 

体を動かす燃料は主に糖質です。枯渇するとペース低下や判断ミスが増えます。さらに試合後の回復でも糖質は不可欠です(※2)。

 

体を回復する材料は、たんぱく質(アミノ酸)です。運動で傷ついた筋や腱の修復・適応には必須アミノ酸が必要で、不足すると回復が遅れます(※2)。

 

熱を逃がす水分は、発汗と血流で体温を下げるために必須です。脱水が進むと心拍や体温が上がり、集中力や持久力が落ちやすくなります(※3)。

 

トレーニングや競技の状況に応じて、食事・水分・サプリメントの種類と量、摂取タイミングを調整することが必要です。また、練習の強度、試合の時間帯、移動の有無で補給を変えなければなりません。

 


水分・電解質(塩分)の重要性

水分は、体温調節、老廃物の排出、栄養素の運搬に重要であり、パフォーマンス向上には欠かせません。水分が足りないと、血液量が減って循環が落ち、補給した栄養も身体の隅々にまで届きにくくなります。結果として心拍上昇、早い疲労、集中力低下、回復遅れが起きやすくなります(※4)。

 

また、運動をすると、塩分に含まれるナトリウムなどの電解質も一緒に失われます。これが不足すると、水分を摂取しても体液の働きを保ちにくくなり、神経伝達や筋収縮の調子も乱れます。

 

さらに、塩分不足のまま水だけを過剰に飲むと血中ナトリウムが低下し、頭痛・吐き気・混乱、重症ではけいれんを起こすことがあります。長時間・暑熱時はスポーツドリンクや塩味のある軽食で、電解質を身体に取り入れなおす必要があります(※5)。

 



三大栄養素の役割と代表的な食品


体を動かす燃料となる糖質

スポーツの現場でまず不足しやすいのは糖質です。
糖質は、筋肉と脳にとって、すぐに使う燃料です。運動中は筋肉に蓄えた糖と血糖を材料にATP(筋肉が収縮するときに使うエネルギー)を作り、特に高強度になるほど糖質への依存が高まります。糖が枯れてくると、スピード維持が難しくなり、集中力も落ちやすくなります(※6)。

 

アスリートは、1日当たり、体重1㎏× 6〜10gが目安です。体重60kgなら 360〜600g/日 です。

 

日常では、主食(米・パン・麺)に加えて芋類や果物などを摂取し、試合直前〜試合中は消化を優先し、脂質や食物繊維が少なく、胃腸トラブルを起こしにくい形(おにぎり、食パン、うどん、バナナ、スポーツドリンク等)で摂取するとよいでしょう(※6)。

 

代表的な食品例(100gあたりの糖質量)(※7

・ごはん(37.1g)
・食パン(46.4g)
・うどん(21.6g)
・バナナ(22.5g)
 


体を回復する材料となるタンパク質

タンパク質は、傷んだ筋肉や腱の修復材料です。トレーニングによって壊れた筋繊維を(筋合成)を回復させ、運動の効果を最大化することに役立ちます。酵素やホルモン、免疫の材料としても欠かせません(※6)。

 

少なくとも 、1日あたり体重1㎏×1.2〜1.7g/kg/日(体重60kgで 72〜102g/日)が目安です。より筋力の維持が必要な競技を行っている場合は 、体重1㎏×1.4〜2.0gが必要です。

 

余計な脂質を取らないために、脂身の少ない肉・魚、卵、乳製品、豆類を軸に摂取するとよいでしょう。同じ理由で、揚げ物よりも、焼く・蒸すといった調理をすることで、回復食として効果を発揮しやすくなります(※8)。

 

代表的な食品例(100gあたりのたんぱく質量)(※7

・鶏むね肉(23.3g)
・鶏卵(12.2g)
・納豆(16.5g)
・豆腐(7.0g)
 


長時間運動のエネルギーやホルモン調整などを行う脂質

脂質は、長時間・低〜中強度の運動での主要エネルギー源になり、細胞膜やホルモンの材料、ビタミンの吸収にも関わります。一方で、試合直前に脂質が多い食事だと消化が遅れ、胃もたれや競技中の不快感につながりやすい点は要注意です(※6)。

 

脂質は、グラム数ではなく、総摂取エネルギーの20〜35% が目安です。脂質は1g=9kcalなので、たとえば総摂取が2500kcal/日なら 約56〜97g/日を目安に摂取するとよいでしょう。

 

摂取する際は、健康への悪影響が大きいトランス脂肪酸を抑え、不飽和脂肪酸や必須脂肪酸を中心にしましょう。これらの良質な脂肪は、オリーブ油やナッツ、青魚などに含まれます。

 

食品例(100gあたりの脂質量)(※7

・アーモンド(51.8g)
・アボカド(17.5g)
・さんま(25.6g)  
 


摂取する際のバランス

三大栄養素を摂取する際のバランスは、多い順に

・糖質
・タンパク質
・脂質

となるように摂取するのがよいでしょう。

 

糖質は、高強度な競技や練習をするほど必要性が増えます。普段は主食を軸に量を確保し、試合前後は消化を優先して低脂質・低食物繊維の形にしましょう(※2

 

タンパク質は一度にまとめず、1回20〜40gを3〜4時間おきに分けて摂取すると、回復食を組み立てやすくなります(※9)。

 

脂質は摂り過ぎると、胃もたれなどの不調の要因になり得るので、日常はオリーブ油・ナッツ・青魚など不飽和脂肪酸中心にし、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸は控えます(※2)。

・日常においては質と総量
・試合周辺においては消化しやすさ

を意識しましょう。
 



タイミング別の栄養補給戦略

タイミングの重要性        

栄養補給は、摂取する内容だけでなく、タイミングも重要です。

 

試合日は食事の時間が普段とは異なったり、緊張で食べられなかったりする場合があります。そうした場面を想定して、栄養摂取のタイミングを考えなければなりません。
 


■ 試合・練習前の食事と補食

試合・練習前は、身体を動かす燃料を補給しつつ、胃に負担を残さない形での栄養補給を目指します。

 

運動の1時間前は体重1kgあたり約1gの炭水化物、2時間前は2g、3〜4時間前は3〜4gを目安にし、時間が長いほど摂取量を増やしていくことが、パフォーマンス維持には必要です。たとえば、体重60kgなら、1時間前は炭水化物60g、2時間前は120g、3〜4時間前は180〜240gが目安になります。果物など、胃に負担をかけにくい形で糖質を摂取しましょう(※10)。

 

水分も前倒しで補給しましょう。脱水を防ぎ、余分な水分を出す時間も確保するために、運動の4時間前に、体重1㎏当たり5〜7mL/kgの水またはスポーツドリンクを目安に摂取することが必要です(※10)。
 


■ 試合・練習中のエネルギーと水分補給

試合・練習中は、少しずつ減っていく燃料と水分を、減った分だけ足していくことが必要です。

 

体に含まれる水分のうち、2〜3%減るだけでも運動能力が低下します。15分おきに約120〜180mLを目安に、こまめに少量の水分を補給するようにしましょう(※11)。

 

競技中に必要なエネルギー・糖質の補給は、競技時間ごとに異なります。運動時間が2.5時間未満なら、1時間当たり糖質30〜60g、2.5時間を超えるなら60〜70g、1時間あたりで摂取する量は最大で90gまでを目安に、補給するようにしましょう(※12)。

 

試合中は、胃に負担をかけないために、スポーツドリンクなどの水分で補給するのがよいでしょう。また、あらかじめ飲料に含まれる糖分の量などを把握し、わかりやすい目安を作っておくと、試合中でも負担なく栄養補給ができます(※11)。
 


■ 試合・練習後の回復を早めるリカバリー栄養

試合・練習後は、次の練習や連戦に向けて、燃料の回復と体の修復を早めます。

 

回復の目安として、運動直後0〜2時間に体重1kgあたり0.25〜0.3gのたんぱく質が示され、糖質と一緒に入れると状況によって回復を助ける可能性が述べられています。(※12

 

夜間の練習などによって夕食が遅くなる場合は、練習前に軽い補食を摂取した後、夕食で調整することが必要です。たとえば、牛乳、ヨーグルト、バナナ、プロテイン飲料、おにぎりなどを、運動前に摂取するとよいでしょう(※2)。
 


競技の目的別の栄養補給プラン    

■ 競技の性質による栄養補給プランの違い

同じ栄養補給でも、競技特性と目的で戦略が変わります。

 

持久系の競技は後半の失速を防ぐ設計、筋力・瞬発系の競技は練習の質を落とさず体を作る設計、階級制の競技は減量中でも安全にコンディションを保つ設計が中心になります
 


■ 持久系で後半に失速しない補給

持久系は競技時間が長いほど、外から糖質を入れて燃料切れを防ぐ必要があります。

 

前述したように、運動時間が2.5時間未満なら、1時間当たり糖質30〜60g、2.5時間を超えるなら60〜70g、1時間あたりで摂取する量は最大で90gまでが目安となります。(※12

 

また、複数の糖質源を組み合わせ、競技中に消化器官の不調が起こらないようにすることも重要です。たとえば、長距離走の練習の際には、飲料と補食の組み合わせと間隔を試すことで、身体に張りや痛みが出ないような栄養補給を設計することが重要です(※12)。
 


■ 筋力・瞬発系で体を大きく強くする補給

筋肥大と瞬発力向上のためには、トレーニングに加えて、食事量を増やして摂取する栄養量を余らすイメージが必要です(※13)。

 

身体維持に必要なカロリーに対して、一日あたり+300〜500kcal/日ほどの小さなエネルギー余剰を作り、ゆるやかに体重増をすることが必要です。たんぱく質は、1日あたり体重1㎏×1.4〜2.0g/kg/を土台に、1回20〜40gを3〜4時間おきに分けると合成刺激を作りやすくなります(※13)。

 

糖質はトレーニングの質を上げる燃料なので、練習量に応じて1日あたり体重1㎏×5〜12gの範囲で増減します(※13)。
 


■ 減量・階級制でコンディションを崩さない補給

減量は「脂肪を落として、練習の質は落とさない」ことが原則です。

 

長期的には、週あたりに減少する体重を、体重の1.5%を上限に、急激な減り方を避けます。急激に減量するほど筋量・集中力・回復力が落ちます。また、食べる量が少なすぎる状態が続くと、体調を崩しやすくなります。免疫・ホルモン・骨などにも影響します(※14)。

 

たんぱく質は減量中ほど意識して、体重1kgあたり1.4〜2.0g/日を目安に確保します。減量の場合は、筋肉を守るためにさらに多めにすることが検討されます(※15)。糖質はゼロにせず、きつい練習の前後に合わせてとるようにしましょう。

 

普段の食事は野菜・果物・汁物でかさを増やし、空腹を抑えます。直前に汗で落とすやり方に頼りすぎず、食事内容と水分・塩分を計画的に調整し、計量後は水分+塩分+糖質で体を戻します。
 


サプリを活用する際の注意点

■ 食事を整えたうえで、サプリを活用する

サプリや補助食品は、食事で足りない部分を埋める道具です。一方で、使い方を間違えると体調不良やドーピングのリスクにつながります。

 

サプリを摂取する前に考えるべき点は、必要なエネルギーを食事で確保できているかどうかです。

 

体重を維持できる十分なエネルギーをさまざまな食品からとれているなら、ビタミンやミネラルのサプリは不要だと述べています。サプリが必要なのは、エネルギー摂取を制限したり、減量をしている選手、特定の食品群を除いている選手、栄養の偏った食事をしている選手です(※16)。
 


■ サプリの選び方

サプリ、食事の代わりではなく、食事での栄養摂取が難しい場面を埋めるために使います。

 

まず不足の補正、運動中の補給、パフォーマンス補助といった目的を決めます。次に科学的根拠の強さで選び、スポーツ協会などで公式に発表されている「有効性が確認されたグループ」から候補を絞ります。

 

摂取量・タイミングは研究で使われた条件に合わせ、自己流の増量は避けます。製品は表示の正確さや製造管理に差があるため、信頼できるメーカーや第三者認証など品質情報を確認し、持病や服薬がある場合は専門家に相談します。なお多くの国でサプリは市販前に安全性・有効性の承認を受けないため、“買える=安全”ではありません(※17)。  
 


■ ドーピングリスクの回避

サプリは、意図せず禁止物質が混入しているリスクがあります

 

リスクを回避するためには、

・そもそもサプリが必要か
・成分やその効果を説明できるか
・禁止物質リストとの照合と第三者検査の有無
・ロット番号を含めて記録できるか

といった点が重要です。

 

まず、使用前に本当に必要かどうかを考え、食事で足りるなら使わないのが安全です。

 

使う場合は、成分表を読んで「何のために、何が入っているか」を自分の言葉で説明できる製品に絞ります。次に、禁止物質リストと照合したうえで、第三者がロット(製造番号)ごとに検査している製品を選び、手元の商品に書かれたロット番号が認証データベースと一致するかまで、細かく確認します。最後に、製品名・成分・摂取日・購入記録・ロット番号を控えておくのがよいでしょう(※18)。  
 



おわりに    

栄養補給は、試合で力を出し切るための戦略です。糖質を中心に燃料を維持し、水分と塩分を補給しながら体内の循環を維持し、試合後はなるべく早く回復のための栄養素をとることが重要です。

 

最終的には、選手それぞれの身体に合わせて、栄養補給を考える必要があります。練習を通して試行錯誤し、専門家やチームの指導者と相談しながら、パフォーマンスを最大化できる栄養補給戦略を組み立てていきましょう。
 


参照

(※2) dietitians.canada Nutrition and Athletic Performance

(※3) PubMed Central (PMC) – National Athletic Trainers' Association Position Statement: Fluid Replacement for the Physically Active – PMC

(※4) 栄養に関する基礎知識|栄養・食事について|循環器病について知る|患者の皆様へ|国立循環器病研究センター 病院

 (※5) Exercise-Associated Hyponatremia: Updated Guidelines from the Wilderness Medical Society | AAFP

 (※6) Nutrition and Athletic Performance

(※7)  穀類/こめ/[水稲めし]/精白米/うるち米 – 01.一般成分表-無機質-ビタミン類

(※8) Sporting performance and food | Better Health Channel

(※9)  PubMed International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise

(※10)  PMC Fueling for Performance

(※11) Fueling and Hydrating Before, During and After Exercise | Nationwide Children’s Hospital

(※12) PubMed Central (PMC) – Nutrition and Supplement Update for the Endurance Athlete: Review and Recommendations – PMC

(※13) PubMed Weight Gain Recommendations for Athletes and Military Personnel: a Critical Review of the Evidence

(※14) researchonline.ljmu.ac.uk ACSM Expert Consensus Statement on Weight Loss in Weight-Category Sports

(※15) stillmed.olympics.com IOC consensus statement on relative energy deficiency in sport (RED-S): 2018 update

(※16) PubMed American College of Sports Medicine position stand. Nutrition and athletic performance

(※17) stillmed.olympics.com IOC consensus statement: dietary supplements and the high-performance athlete

(※18) UK Anti-Doping – Managing Supplement Risks | UK Anti-Doping



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