スポンサーが集まらないチームに共通する3つの問題|協賛営業とパートナーシップで改善するスポーツチーム経営
スポーツチーム経営において、スポンサー収入は活動を支える大きな柱です。しかし協賛営業に力を入れているにもかかわらず、スポンサーが集まらない・継続されないという悩みを抱えるチームは少なくありません。なぜ同じように営業をしていても、成果に差が出るのでしょうか。
スポンサーが集まらないのは、提案の設計・効果測定・契約後の活用という3つの段階に共通の問題があることが原因です。本記事では、スポンサー獲得がうまくいかないチームに見られる構造的な問題を整理し、課題解決型のパートナーシップへ転換するための具体策と事例を紹介します。
スポンサー獲得の定義と前提
協賛営業とパートナーシップの違い
スポンサー獲得の営業活動は、単なる寄付の依頼ではありません。企業に対して金銭的または物品的な支援を依頼し、その対価として広告露出やブランド向上の機会を提供するBtoB営業活動を指します。つまり本質は、企業のマーケティング目標の達成を支援するビジネスパートナーシップの構築にあります(※1)。
協賛営業とパートナーシップは、目的と捉え方が異なります。協賛営業が「支援を獲得するための営業行為」であるのに対し、パートナーシップは「互いの課題を解決し合う関係性そのもの」を意味します。スポンサーはイベントの収益構造を強化したり認知度を向上させたりするための重要なパートナーであり、一方的にお金を出してもらう相手ではありません(※2)。協賛営業の成否を分けるのは、この関係性をどこまで設計できるかという点です。
スポンサー収入の経営的位置づけ
スポンサーが集まらない背景
支援型からの市場変化
スポンサーシップは、寄付に近い支援型から露出型を経て、現在は社会的なつながりや地域との絆といった固有の価値にも関心が集まる形へ変化しています(※4)。初期は寄付に近い金銭的支援が中心でした。その後、スポーツが成長するにつれてテレビ中継での看板やロゴ掲出に代表される「露出価値」が生まれ、スポーツがメディアの一種として扱われるようになりました。2000年代にはグッズ開発や販促キャンペーンなど、メディアの枠を超えたマーケティング活用が増加しました。
従来の看板広告やユニフォームロゴといった露出型スポンサーシップから、企業の課題解決に貢献する「価値共創型」へのシフトが進んでいます(※1)。この変化を理解せず、かつての支援型・露出型のまま営業を続けていることが、スポンサーが集まらない背景の一つです。
企業側が求める価値の多様化
企業がパートナーになる目的も大きく変わっています。かつてはチームの理念に共感した純粋な支援や、スタジアム・ホームページなどでの広告によるブランド認知向上が主な動機でした。しかし近年では、スポーツチームの持つネットワークを活用したビジネス機会の創出や、経営課題の解決を目的とする「課題解決型」に遷移しています(※5)。
つまり、企業は「ロゴを出す場所」ではなく「自社の売上・採用・従業員満足度などの課題を一緒に解決してくれるパートナー」を求めています。この認識のずれを埋めないまま協賛営業を続けると、提案が企業の検討テーブルに乗らないという結果を招きます。
問題1:提案がチーム都合で終わる
企業の経営課題を起点にしない営業
スポンサーが集まらないチームに最も多く見られるのが、提案がチーム側の都合で完結してしまうという問題です。たとえば、自チームの資金目標をもとに「ゴールドプラン」「シルバープラン」のようなパッケージを作り、手当たり次第に送付する。このやり方では返事がもらえないケースが大半です。多くの場合、ターゲット選定の失敗は「企業のマーケティング戦略を理解せずにアプローチしている」ことが原因とされています(※1)。
あらかじめ定められた特典を数段階のパッケージにまとめ、知り合い全員に送付するという手法では、企業固有の課題に応える提案にはなりません。むしろ、最初は提案書を持たずに相手企業へ質問を聞きに行く姿勢が有効です(※6)。企業が何に困っているのかを把握した上で、初めてスポーツチームとしてどんな価値を返せるかを設計できるようになります。
アセット棚卸しと提案書設計の不備
もう一つの課題が、自チームが提供できる資産の棚卸し不足です。画一的なパッケージを用意するのではなく、まず自分たちが売れるもの全てを洗い出すことが出発点になります(※6)。試合日の会場演出、SNSでの発信枠、選手の登場機会、ファンコミュニティへのアクセスなど、チームが持つ資産は想像以上に幅広いものです。
資産の一覧を作り、企業ごとの課題に合わせて組み合わせを変えることがポイントです。そうすることで、企画書は「イベント概要の説明」にとどまらず、スポンサーシップのメリットを明確に提示し、協賛を検討してもらうための説得力ある資料へ変わります(※2)。チーム都合のテンプレートから脱するには、まず自らの資産を把握し、次に相手の課題を知るという順番が欠かせません。
問題2:効果が見えず継続されない
KPI未設定と成果報告の欠如
スポンサー契約を獲得できたとしても継続に至らない要因の一つが、パートナーシップの効果を数字で示せないことです。価値の定量化ができない原因は「データ収集・分析の仕組みがない」ためであり、継続契約につながらない原因は「契約後のコミュニケーション不足」にあります(※1)。
多くのスポーツチームが「取組み価値を測定できない」「運営のリソース不足」「継続的にコンテンツ生成ができない」といった課題を抱えており、企業の課題解決型ニーズに対応できていません(※5)。スポンサーマーケティングにおいては、目的やKGI/KPIの設計、活用の方向性、必要な資産の可視化などを体系的に整理し、事業成長というゴールまでの道筋を描く”地図”として機能させることが求められます(※7)。
社会価値の可視化という新基準
企業が求める効果は、広告の露出回数だけにとどまりません。地域の健康増進や教育支援など、スポーツを通じて生まれる社会的なインパクトも評価対象になりつつあります。コンテンツの実施前にどの程度の社会価値を創出できるかを見極め、予算獲得の根拠として活用する動きが出ています。さらに、活動を実施して終わるのではなく、その活動が生み出した価値や参加者の行動変容についてレポートを作成し、企業に報告するという流れが提唱されています(※5)。
こうした社会価値の可視化に取り組めるかどうかが、スポンサーの継続判断を左右する新たな基準になりつつあります。効果が見えないという問題を解消するには、契約の初期段階で測定指標を企業と合意し、定期的に結果を共有する仕組みを構築することが不可欠です。
問題3:ロゴ掲出だけで終わる活用不足
アクティベーション欠如の損失
3つ目の問題は、企業ロゴを掲出するだけでパートナーシップの活用が止まってしまうケースです。企業やブランドのロゴを表示するだけでは効果があるとは言えず、商業的な目的を達成するために行う具体的な活動である権利を活かした販促活動(アクティベーション)が、スポンサーシップにおいて最も重要な位置づけとされています(※8)。
協賛の基本権利料を1とした場合、権利活用、つまりアクティベーションのためのコスト比率は、海外と比較して国内企業では低い傾向があるとされています。また、同資料ではIEGの調査をもとに、海外では権利料1ドルに対して平均2.20ドルをアクティベーションに使うというデータも紹介されています(※8)。ロゴ掲出だけに留まると、企業側が期待する認知向上、販促、顧客接点づくりなどにつながりにくく、結果として契約継続の判断に影響する可能性があります。
投資対効果を高める活用事例
バスケットボールのアルバルク東京では、パートナー企業であるアデコが人事担当者向けにワークショップと観戦交流会を開催しています。「サステナビリティ」や「人的資本経営」をテーマにプレゼンテーションと参加者同士の交流会を実施し、終了後は試合観戦を行いネットワーキングの場を提供するという内容です(※9)。
バレーボールのサントリーサンバーズ大阪では、熱狂的な女性ファンに対する商品・サービスの認知度向上や販売促進施策、ファミリー層への商品サンプリング、SNSを活用したキャンペーン、マッチデーイベントでのブース出展を通じた新規ユーザー獲得といった多面的な活用が行われています(※10)。ロゴ掲出の先にある「企業の事業目標に直結する活動」を共に設計することが、パートナーシップの価値を最大化する鍵です。
課題解決型パートナーシップの設計
共創型モデルへの転換手順
ここまで見てきた3つの問題を解消するには、協賛営業の枠組み自体を「共創型パートナーシップ」へ転換する必要があります。サントリーサンバーズ大阪が掲げる共創型パートナーシップは、クラブ・ファン・地域社会・パートナー企業とのつながりを強く持ち、互いに成長していくことを目指す仕組みです。パートナー企業のブランド価値向上、販売促進、商品開発、ビジネス機会創出、従業員のエンゲージメント強化、地域貢献・社会貢献など、目標達成や課題解決に貢献することが設計の軸になっています(※10)。
転換を行うには、まず企業の課題をヒアリングし、次にチームの資産と掛け合わせた施策を提案し、実施後に効果を報告するというサイクルを回すことが必要です。「スポーツの地図ver1.0」は、目的やKGI/KPIの設計、アクティベーションの方向性、必要な資産の可視化などを整理し、事業成長というゴールまでの道筋を描く”地図”として機能することが示されています(※7)。
地域・社会課題との接続方法
課題解決型パートナーシップをさらに深めるには、地域や社会の課題とスポンサー施策を接続する視点が有効です。パートナー企業がいつでもアクセスして出会い、企画や情報を得られるデジタルプラットフォームを整備し、参加企業同士が個別またはグループでコミュニケーションを取りながら意見交換やナレッジシェアを通じたビジネスマッチングを行える場を設ける仕組みが提唱されています(※5)。
チームが地域のハブとなり、パートナー企業同士のつながりを生む場を提供すること。これは単なるロゴ掲出では絶対に実現できない価値です。地域の健康課題、子どもの教育機会、高齢者の孤立防止といったテーマにスポーツの力を組み合わせれば、企業にとっても社会貢献とビジネス成果を両立できる魅力的なパートナーシップになります。
改善に成功したチームの事例
南葛SCのパートナー400社獲得戦略
東京都葛飾区を拠点とするサッカークラブ南葛SCは、業界・業種を超えた地域企業との連携を広げ、パートナー企業が400社を超えるまでに事業面の成長を加速させています(※11)。この数字は、地域密着型のクラブがいかに多くの企業とパートナーシップを築けるかを示す好例です。
南葛SCが重視しているのは、地域からの支持を示すバロメーターとなる「収容率」です。そのためには監督や選手が強いだけでなく、魅力的なチームを目指すことが欠かせません。一方、スタジアムに足を運んでもらうためのきっかけづくりは広報PRの役割として位置づけられています(※11)。観客が増えればパートナー企業の露出機会やアクティベーションの効果も高まるため、チームの魅力づくりとスポンサー獲得は密接に関係しているといえます。
福山シティFCの自走型クラブ経営
広島県福山市を拠点とする福山シティFCは、コロナ禍を経て「スポンサーに頼らない自走できるクラブ経営」へ舵を切り、サッカーチーム運営以外のさまざまな事業に取り組んでいます(※12)。自走型とはいえ、スポンサーとの関係を断つという意味ではありません。
福山シティFCには364社のパートナー企業が存在し、そのうち95%は地元企業です。同クラブは単なるスポンサーの枠を超えた「ビジネスプラットフォーム」として機能することを目指し、スポーツ以外の価値提供を含めて全方位からビジネスを展開するグループ戦略に挑戦しています(※12)。スポンサー収入に依存するのではなく、パートナー企業と共にビジネスを生み出す構造を作ることで、結果として企業からの支持が集まるという逆転の発想です。
失敗を防ぐ協賛営業の注意点
協賛営業では、契約を獲得した瞬間がゴールではありません。スポンサーからの同意を得ることは全体の約20%に過ぎず、資金を受け取った後にもプロセスの80%が残っているという考え方があります(※6)。契約締結後のフォローアップこそが、継続契約と紹介による新規獲得を生む鍵です。契約直後にキックオフミーティングを設定し、今後のスケジュール、担当者、連絡体系を確認した上で、成果測定の指標を企業と合意しておくことが欠かせません(※1)。
加えて、広報PR活動を通じてパートナー企業へのアプローチを強化するとともに、ファン層の拡大やロイヤルティの向上を実現するという視点も持っておく必要があります(※13)。契約前の提案設計だけでなく、契約後の実行・報告・改善という一連の流れを設計することが、同じ失敗を繰り返さないための最も実務的な対策です。
おわりに
スポンサーが集まらないチームに共通する問題は、提案がチーム都合にとどまること、効果測定と報告が欠けていること、そしてロゴ掲出だけで活用が止まることの3点に集約されます。いずれも、企業を「お金の出し手」ではなく「課題を共に解決するパートナー」として捉え直すことで、改善の糸口が見えてきます。
南葛SCや福山シティFCの事例が示すように、地域企業との関係を深め、スポーツの場をビジネスプラットフォームに変えていく発想こそが、持続的なスポーツチーム経営を支える力になります。まずは自チームの資産を棚卸しし、パートナー候補の課題を聞くところから始めてみてください。
参照
(※1) リードダイナミクス – スポンサー獲得 営業の実践ガイド|成功事例と具体的アプローチを解説
(※2) 業務効率化の基礎知識 | 業務効率化や生産性向上のノウハウ、クラウドツールの使い方など、ビジネスシーンで役立つ基礎知識をご紹介します。 – スポンサー募集用の企画書に記載する項目は?テンプレートも紹介 | マネーフォワード クラウド
(※3) 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ経営基盤本部 クラブライセンス事務局 – 2024年度クラブ経営情報開示資料(本発表)
(※4) dentsu-ho.com – What is the “Sports Map” that visualizes the “value of sports” for companies, sports organizations, and consumers?
(※5) KPMG – 2024年度クラブ経営情報開示資料(本発表)
(※6) The Sponsorship Collective – The Definitive Guide to the Sponsorship Proposal: 7 Steps to a Proposal that Actually Works!
(※7) dentsu-ho.com – 電通、競技団体・企業・生活者それぞれにとってのスポーツの価値を高める 戦略的フレームワーク「スポーツの地図」をローンチ
(※8) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – スポーツ・スポンサーシップ実施企業調査2019発表 | ニールセン スポーツ ジャパン株式会社のプレスリリース
(※9) アルバルク東京 – パートナー・スポンサー募集ページ|アルバルク東京 | アルバルク東京
(※10) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 【サントリーサンバーズ大阪】2025-26シーズンパートナー募集 | サントリーサンバーズ大阪(サントリースポーツ(株))のプレスリリース
(※11) PR TIMES MAGAZINE – 『キャプテン翼』から生まれたサッカークラブ。地域とつながり、応援され続ける広報PR|南葛SC | PR TIMES MAGAZINE
(※12) 広島・岡山・山口・愛媛等、中国・四国地域のM&A・事業承継専門コンサル |クレジオ・パートナーズ株式会社 – 地域課題解決型サッカークラブが挑む共創!スポーツビジネスにおける成長戦略型資本提携 | クレジオ・パートナーズ株式会社
(※13) PR TIMES MAGAZINE – スポーツチーム・団体が広報PRを強化するメリットとポイントを解説【プレスリリース事例25選】 | PR TIMES MAGAZINE
